漢方での診断は、見る、嗅ぐ、聞く、触る……といった五感の全てを使い、丁寧にお話を聞いていく中で決めていきます。
漢方の診断法の四診とは?
この診断方法は四診(ししん)とよばれます。
1)望診(ぼうしん)……..顔色や舌の状態(舌診)を見て診断する
2)聞診(ぶんしん)…….声や体から発する音を聞く・臭いを嗅ぐ
3)問診(もんしん)……..問いかけて答えてもらう
4)切診(せっしん)……..患者さんに触ってする診断。お腹を触ったり(腹診)脈の状態(脈診)を診る
明治時代になって漢方・鍼灸が廃止された理由は?
日本の伝統医学である漢方薬や鍼灸の代わりにドイツ医学が採用されたのは何故かご存知でしょうか?
大きな理由のうちの一つに、西洋医学が軍事的な理由、つまり戦争の際に便利な医学だったからということがあります。明治政府は、富国強兵のスローガンのもと、西洋の列強に追いつくことをその国是としていました。
先ほど書いたように、漢方は見て、触って、お話しして……と丁寧に診断するため、診察に時間がかかりますし、処方する薬や治療法も個人個人で違います。
ところが多くの負傷者が出る戦争の中では、ゆっくり時間をかけて診断をする時間はありません。一律に所定の検査をして、同じ薬や治療法で治療をするのが最も効率が良いわけです。とにかく、その場での痛みや熱、出血をできるかぎりすばやく止め、すぐ戦えるようにする必要があったわけです。
時々、「漢方が古臭くてダメな医学だったから廃れた」なんて、思われている方がいるようですが、実際は、戦争という必要性からきたものだったのです。
そしていま、再び漢方が注目されるようになってきた理由もまたここにあります。
現代では、ライフスタイルが異なるため、病気の原因も個人個人でまったく違う場合が多く、生活習慣からくる慢性病の方が多いのです。そのため、一律、同じ薬を投薬しても治らないことがよくあります。また、症状を一時的に抑える薬が多いため、たとえば、高血圧の薬のように、一生同じ薬を飲まねばならないことになる場合も多々あります。
そこで大事になるのは丁寧に全体を診てお話を聞くことです。患者さんと一緒に原因を考えなければ正しい診断や治療法を選ぶことは不可能です。
既製品ではなく、じっくり時間をかけて作るオーダーメイド。
スキンシップと会話が豊富な温かい医療、それが漢方なのです。